2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

XIII 13の数と「復活」神話

最近耳にした話。日本のアニメが、イスラム圏の国で人気だとか。宗教(キリスト教)の解釈のいい加減さが受けているらしい。(一般の)日本人には、一神教の神様の厳格さは、永遠の謎かも。 …ということで最終回。 ドストエフスキーは「13」の数字がお好き…

XII 人間と神と祈り

<信仰と瀆神の間を揺れ動くラスコーリニコフ> 幼い頃はまわらぬ舌でお祈りを唱えていた青年が、混乱のロシアの現実を目の当たりにして「神は死んだ!」と、社会から掃き捨てられた極貧の被差別民を人間に引き上げようと志す。彼自身没落貴族で、妹は成金の…

XI 万人が滅び去る夢

エピローグの読み解き…終末論から復活論へ…シベリア流刑の地でラスコーリニコフが見た夢は、ちょっと難解。ある種の繊毛虫が人体に寄生し発狂させて、傲慢と流血が蔓延する…SF的にいうと、ウィルス状のエイリアンが人体に侵入して、互いに争わせ、人類を自滅…

X ソーニャの愛と肉体

ラスコーリニコフが罪を打ち明けるのは、ソーニャでなければならなかった。もはや清廉潔白ではない自分は、母や妹と同等ではない。「新しきエルサレム」に入れない殺人者と淫売婦は、神に呪われたもの同士。 汚らわしい人殺しと、二千年前にキリストによって…

IX 性の生贄

家族を養うために身を売らなければならなかったソーニャ。その分身のリザヴェータは「観照派」の巫女で、集団で聖霊を感知して法悦に浸る儀式の「聖痴愚」だった(O_O)…「大女で醜いけれども、善良で物静かでなかなか魅力的で、常に孕んでいる」とのうわさ話…

VIII ロシアの魔女

強欲婆さんアリョーナ・イヴァーノヴァは、実は魔女。ロシアの民話に出てくるババ・ヤガーという、子ともを捕まえて喰っちまったりする魔法使いのお婆さんね。義妹の大女リザヴェータを子供のように支配し、搾取する。もちろん人々の生き血を啜る高利貸し。…

VII 「罰」とは何か

結論から言えば「生と愛の権利を取り戻すための行動が、’愛の不能’の罰を受ける結果となった」と言うことらしい。現実的には、ラスコーリニコフは懲役8年の刑を受けるんだけど、本人にしてみれば苦行を受けることに名誉を見出すような感覚…流刑地での高慢な…

VI 「ノアの箱船」の行方

箱船のイメージ:ペテルブルグそのもの、ラスコーリニコフの部屋、金貸しアリョーナのアパート、スヴィドリガイロフの安宿… 「罪と罰」執筆をはじめた頃、ドストエフスキーは、コペンハーゲンから苦しい6日間の船旅をしていたそうな。決して逃げ出せない海…

V ロジオン・ラスコーリニコフ=割裂英雄

ラスコーリニコフがラスコーチ(分離、分裂)から命名されたとして、ロジオンを「英雄」とした理由の説明。 ギリシャ語のロドン(薔薇)から派生して太陽と解釈する向きもあるそうだけど、「へーロス(英雄)→イロジオン→ロジオン」とした方が妥当。へーロス…

IV ペテルブルグは地獄の都市

ロシアは寒いところって印象があるけれど、ペテルブルグは最高気温30℃にもなるときがあるそうな。とくにこの小説の年1865年は記録的な猛暑で、まさに焦熱地獄(^^;;)。近代化の遅れを取り戻すための農奴開放政策の失敗で、地方の食い詰め者たちが大挙押し寄せ…

III パロディとダブル・イメージ

ダブル・イメージ=道化とキリスト→ラスコーリニコフ&マルメラードフ。二人とも道化であると同時にキリストを体現している。ピラドがイエスを惨めで滑稽な姿にさせて、ユダヤ人に同情を起こさせようと期待するくだりがあるそうな(ヨハネ伝19章) …ラスコー…

II 666の秘密

黙示録の獣=アンチクリスト=悪魔の刻印…こんな映画があったな〜…ヘブライ語で書かれた666が、アラビア数字に変換するのは、なんか変?と思っていたけれど、数字の表記ではないのだそうだ。「ゲストマニア」といって、各国のアルファベットに数値をつけて、…

I 精巧なからくり装置

右の画像は 謎とき『罪と罰』 作者: 江川 卓 メーカー/出版社: 新潮社 発売日: 1986-02 メディア: Book 「罪と罰」のロシア語の題名は「プレストゥプレーニエ・イ・ナカザーニエ」で、プレストゥプレーニエは、人間の定めた掟を越える(一線を踏み越える)と…