VI 「ノアの箱船」の行方

箱船のイメージ:ペテルブルグそのもの、ラスコーリニコフの部屋、金貸しアリョーナのアパート、スヴィドリガイロフの安宿…
罪と罰」執筆をはじめた頃、ドストエフスキーは、コペンハーゲンから苦しい6日間の船旅をしていたそうな。決して逃げ出せない海洋に浮かんで、息苦しい船室、世間から隔絶された世界、海洋の真っ只中脱出も不可能。方舟の息苦しさに耐えられないものは、水に飛び込むしかない。
神に見捨てられたロシアの下層民衆は、鼠や虱として乗り込むことが出来るか?神に背いたラスコーリニコフとスヴィドリガイロフ…一方は自首して生き延び、他方は自殺して三途の川を渡る。二人とも水を恐れていた。