VIII ロシアの魔女

強欲婆さんアリョーナ・イヴァーノヴァは、実は魔女。ロシアの民話に出てくるババ・ヤガーという、子ともを捕まえて喰っちまったりする魔法使いのお婆さんね。義妹の大女リザヴェータを子供のように支配し、搾取する。もちろん人々の生き血を啜る高利貸し。ラスコーリニコフは魔女を退治し、虐げられた人々を救う「英雄」になる予定だった。ところが魔女と一緒に囚われ人のリザヴェータまで殺ってしまう。
そこでドストエフスキーの手品。踏みにじられても、泣くこともせず、うめくこともせず、ひたすら耐えているリザヴェータとソーニャが重なって、再生するしくみ。
ところで、帽子など被り物をして、髪を人目に触れないようにするのが、ロシア女性のたしなみなんだって。ソーニャが登場する場面は、必ず何を被っていたかの描写がある…プラトーク(スカーフ)滑稽な麦わら帽子、古くさい帽子、緑色のショールetc.…当時は既婚女性は、室内でも布製のキャップなどを被っていたそうな。「むき出しの髪」は、ふしだらではしたない女ということに。
アリョーナ婆さんの場合「むき出しの髪」が魔性をも表しているそうな。しかも鼠の尻尾のように編んで頭に巻きつけている。そして鶏の足みたいな首筋…鼠は悪魔の化身or従者のイメージ(ぞ〜Brrr)andババ・ヤガーは、移動可能な鳥の足つき住居に住んでいて獲物を狙うんだって。