フィガロの結婚(続々蛇足)

「理髪師」と「結婚」は、ほぼ同じ筋書き。家政婦のマルスリーヌも「理髪師」に名前だけは出てくる(フィガロの計略で、バルトロ家の召使たちがロジーナの見張りが出来なくなったところ)…オペラのほうは、あの面白いメゾ・ソプラノのベルタだと思う。
罪ある母」の正式タイトルは「もう一人のタルチェフまたは罪ある母」といって、タルチェフとは、モリエール戯曲のペテン師の名前。

  • 男児から普通のおじさんへ

フィガロとスザンナが結婚して20年後、アルマビバ伯爵夫妻はパリに在住中。一家には夫人とシェリュパンとのたった一度の不倫の子レオン、伯爵の被後見人(実は隠し子)フロレスティーヌ、アイルランド人ベジャースが同居。
伯爵はレオンの出生を疑い、彼を嫌っている。レオンとフロレスティーヌは相思相愛。ベジャースはもとシェリュパンの同僚で、現在伯爵の秘書。個々の秘密を握っていて、伯爵家の財産乗っ取りとフロレスティーヌをわがものにしようと目論んでいる。
ベジャースの偽善に完全に騙され、信頼しきっている伯爵一家を救うため、フィガロとスザンナが行動開始。


喜劇と言うより、狡猾な策士に引っかき回される伯爵家のメロドラマ。前二作と比べて悪役が何とも陰湿。伯爵夫妻、フィガロとスザンナも、年を取ったのか、常識人過ぎて魅力に欠ける。結末も予想通り。「ボーマルシェ一代記」によると、道徳的な「町民劇」をめざしたため劇的完成度が減じてしまったとのこと。