ドン・カルロ

ヴェルディ作曲。リッカルド・ムーティ指揮 (スカラ座1992年)
(いろんな版があるらしく、これはイタリア語、四幕版)

ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」全曲 [DVD]

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「ドン」繋がりで、再視聴。。。ジョヴァンニと比べてしまった(;^_^A …つまり「大きな図体して、ガキみたいなこと言うなよ!カルロさん!!」
原作はシラー。1560年頃の落日のスペイン王国を、出来損ないの王子に見立てて虚実入り混ぜて書いたんだって。どうりで頼りない…(笑)

  • 主な登場人物

フィリポII世(スペイン王):サミュエル・レイミー(Br)
ドン・カルロ(その王子):ルチアーノ・パヴァロッティ(T)
ボーサ候ロドリーゴ:パオロ・コーニ(Br)
大審問官:アレクサンドル・アニシモフ(B)
エリザベッタ(王妃):ダニエラ・デッシー(S)
エボリ公女(その女官):ルチアーナ・ディンティーノ(MS)

  • あらすじ

・第一幕
フランスの王女エリザベッタは、スペイン王子カルロと婚約していたが、その父親のフィリポ2世と政略結婚させられる。カルロは王妃たる義母への恋慕で、グジグジ。エリザベッタのほうは、毅然として悲運を受け入れている。
親友のロドリーゴは、スペインに搾取されているフランドルの解放に情熱を献げるよう諭す。王妃と息子の仲を疑う王は、高潔なロドリーゴに調査依頼。
エリザベッタの女官エボリは、王子の憂いは自分への愛のためと勘違い。
・第二幕
密会の手紙を受け取って会いに行くカルロ。彼が愛しているのは王妃とわかったエボリは嫉妬の炎。
異端者火刑場にて、カルロがフランドルの使者と共に現れ窮状を訴えるが、王は拒否。カルロ、剣を抜き拘束される。
・第三幕
淋しい王様、王妃には愛されてないし、王子は殺したくないし、どないしたらよかんべと、大審問官に相談。盲目の大審問官は「親子の情より王としてのつとめを果たされよ。ついでにロドリーゴも反逆者として、処刑すべし」と、居丈高。
カルロの肖像画入り宝石箱を突きつけられた王妃は、貞操を疑われて嘆く←盗んで王に渡したのは、エボリ。後悔したエボリは(王との不倫関係も)告白して、国外追放か修道院行きを命じられる。「わたしの、あだな美貌がいけないのよね。カルロを助けなくちゃ♪」
牢に忍び込んだロドリーゴは、フランドル問題はすべて自分が被ったので、後は頼む!と言った途端に凶弾に倒れる。エボリに煽動された民衆が、カルロ解放を叫ぶ。王と審問官が平定する隙に、脱走。
・第四幕
フランドルへ脱出前に最後の別れをするカルロとエリザベッタ。そこへ王と大審問官がやって来て、捕らえようとする。その時前王(フィリポ2世の父、カルロの祖父)カルロ5世の亡霊が出現して、カルロを連れ去る。

スペイン領フランドルの新教徒への弾圧に義憤を持ち、解放に腐心したロドリーゴは、シラーが創作した架空の人物。だからいくらでも高潔になれるわけね(笑)
愛に苦しむ親友のカルロを諫め、王に対しても歯に衣を着せぬ言動で信頼を得る。。。それにしては、人を見る目がないよね〜(¨;)せっかく罪を被ってまでフランドルをカルロに托したのに、あっさり亡霊に連れて行かれちゃった。何のために命を落としたのか?
この点に関しては、シラーの原作はどんな結末になっているのか、読んでみたい。

  • 大審問官

カラマーゾフの兄弟」に出てくるよね。神を見限って、悪魔と結託したような聖職者。この審問官も不気味な存在感。
広大なスペイン帝国を維持するためには、ローマ教会の手を借りて王権を強化せざるを得なかった。最初はユダヤ人の財産没収が目的だったんだって。宗教改革の嵐の中で、商人の町フランドルを搾取する必要があった。よーするに戦争するためのお金が要るからね。無敵艦隊は、エリザベスちゃんに壊滅されるし。

  • ノンフィクションのカルロ

フェリペ2世の最初の妻は「狂女フアナ」の血を引く人で、二人の間に生まれたのがドン・カルロ。その死後再婚相手は、ブラッディ・メアリ。メアリを処刑したエリザベス1世に求婚するも、体よく振られ(新教徒だったし^^;)て、フランスとの同盟を強化するために、息子の婚約者であったエリザベッタを娶ったというわけ。
実際のカルロも、ちょっとオツムテンテンだったらしい。フランドルに通じて、幽閉され、獄死。相前後してエリザベッタも死亡。二人の間に道ならぬ恋があったという記録はないらしい。