神話17

・アース神とヴァン神がかつて和睦を結んだ頃、一つの壷に双方が誓いの言葉を述べて唾を吐き込んだ。そこから平和の印を失わないように、賢者クヴァシルを造った。クヴァシルは世界を旅して人々に知恵を授けて回った。
・そのクヴァシルをドワーフのフィヤラルとガラルが殺して、その血に蜂蜜を混ぜて蜜酒を造った(二つの鉢と一つの鍋に)…これを飲むものは詩人か賢者になれるという。
ドワーフたちは巨人ギリングとその妻を殺害。ギリングの子スットゥングに償いに蜜酒を差し出した。彼はそれを持ち帰り、ある山に隠して娘のグレンズに番をさせた。
オーディンはそれを知ると、いかにしてもその蜜酒を手に入れたいと思って、スットゥングの兄弟バウギのもとへ行った。バウギの九人の下僕に殺し合いをさせ、人出の足りなくなった彼に、九人前の仕事をする代わりにスットゥングの蜜酒を一飲みするのに手を貸してくれるよう申し出た。
・仕事を片づけたオーディン(偽名ボルヴェルク…災いを引き起こす者の意)は、バウギと共に出かけたが、スットゥングは断る。
・そこでバウギが山に錐で穴を開け、オーディンは蛇に姿を変えて潜り込んだ。蜜酒の番をしているグレンズをたぶらかして、三夜滞在し一夜に一度ずつ蜜酒を飲むことを許される。最初の一度で鍋を飲み干し、二度目で一つの鉢を、三度目にもう一つを飲み干した。
オーディンは鷲に姿を変えアースガルズに帰還。蜜酒を壷の中に吐いた。だがスットゥングがすぐ後ろに追って来たので、少しこぼしちゃった。誰もそれを仕舞わなかったので、欲しい者がそれを手に入れることが出来た。それが「へぼ詩人」の分け前。
オーディンはスットゥングの蜜酒を、アース神や詩を創ることの出来る人間達に分け与えた。