神話11

  • トールとウートガルザロキ

・トールとロキが山羊に曳かせた車に乗って出かけ、ある農家に宿を取った。食べるものがなかったので、トールの山羊二頭の皮をはいで鍋で料理した。食べるときに骨は損なわないように山羊の皮に投げ入れるように言いつけた。しかし、百姓の息子シャールヴィは腿の骨の髄をこじ開けて食べてしまった。翌朝山羊皮を槌ミョルニルで浄めて、山羊を再生させたが、一等の山羊がびっこをひいた。トールは烈火のごとく怒ったが、恐れおののいた百姓が息子二人を差し出した。シャールヴィとレスクヴァは以後トールの召使いになる。
・山羊は快復するまで農家に残し、一行はヨーツンヘルムに向かう。森の中で彷徨い、食糧も乏しかった。
・暗くなって巨大な小屋を見つけ、宿をとった。夜中に大地震が起こり、手探りで別室へ入った。凄まじい騒音とうなり声で、一夜が明けて外に出ると、並の巨人よりはるかに大きな巨人がいびきをかいて寝ていた。スクリューミルという名で、昨夜の小屋は彼の手袋だった。
・巨人はトールをみとめて、同行することになった。自分の巨大な食糧袋にトールたちのも入れて担いで出発。一日中歩いて、夜になると「もう疲れたからわしは寝るが、あんたたちは袋を開けて食事をとってくれ」と巨人は言って、大いびきをかいて寝てしまった。
・トールは食糧袋を開けようとするが、結び目一つ解くことが出来ない。怒って槌ミョルニルを、寝ているスクリューミルの頭に一撃を加えたが、木の葉が一枚落ちてきたほどにしか感じない。
・真夜中になると鼾が大きくて寝られない。トールは力一杯槌を振りかぶったが、ミョルニルはドングリでも頭に落ちてきたのかと言う。夜明け前にもう一度、渾身の力を振り絞って頭を打つが、鳥が枝を落としたのかと思ったと言い「しばらくするとウートガルズの城塞に着くが、そこではわしよりでかい者が大勢いる。ウートガルザロキの家来たちはおまえたちのようなチビの威張りん坊はガマンできないぞ」と言って別れた。
・その日も一日中歩いて城についた一行は、ウートガルザロキに馬鹿にされ、力比べをする。ロキはフギと食べ比べに負け、シャールヴィはフギに駆け足で負けた。
・トールには角杯を出され「この角杯を一息で飲み干せば、見事な飲みっぷり。二息ならば、普通。三息では、酒飲みとは言えない」と言われる。
トールは喉が渇いたので見始めたが、息が続かず口から話すと全然減っていない。二息めも目にみえるほどには減らない。三息めは大分減ったが、飲み干すところまでいかなかった。
・次にウートガルザロキの猫を持ち上げる腕試し。巨大な猫は、トールが持ち上げると背中を丸め、片足だけが地面から離れた。
・最後にウートガルザロキの乳母と角力をとることに。トールは最終的に片足をついて負けちゃった(笑)
・その後、ふんだんにもてなされ、翌朝出発の時、大恥をかいたことを告げると、ウートガルザロキは真相を語った。
☆食糧袋は鉄線で縛ってあって、どこから開けて良いか分からないようにしてあった。
☆三度槌で叩いたのは、館の近くの山だった。今では三つの四角い谷が出来ている。
☆ロキと食べ比べをしたのは「野火」で、桶も燃やし尽くした。
☆シャールヴィは「思考」と競争した。思考のスピードにはどんな早足でもかなわない。
☆角杯の端は海に繋がっていて、トールが飲んだために、干潮が始まった。
☆猫はミズガルズの大蛇で、陸地をとりまいた頭と尻尾が地面から離れた。
☆乳母は「老齢」で、あれほど抵抗し、片膝をついただけとは恐れ入った。もう二度とわしの城には近づかんでくれい!!
…と言って城もウートガルザロキも忽然と姿を消した。そこで、トールはミズガルズの大蛇を探しに行こうと決心した。